クレルちゃんとりお


諸注意

この物語は、EP7後(?)の舞台裏という前提です。
キャラ崩壊には特にご注意ください。





真っ暗な劇場がか細いスポットライトに照らされる。
そこには一人の少女の姿。全身が雪のように白く、まるで儚く咲く一輪の白い花のようだった。

そして少女は薄く口を開き、語り始める。
「………我こそは、我にして我等なり…。第7のゲームが終わり、我の役目も終わった…。これもまた、いずれは来ることが決まっていた運命。」

彼女は、何度も運命に抗おうとした。
だが、運命はいつも非情。だから彼女は、抗うのをやめ、その身を運命に任せた。

だからあの時ウィルに心を理解してもらい、ようやく眠りにつけたのも運命だった。

しかし第7のゲームが終わった今、彼女の中になにかが芽生えた。


「…………私は、運命に逆らうのをやめた身。しかし今私は決意しました。………もう一度、運命に立ち向かうことを、………誓います。」

「聞いた聞いた、フルフル?」
「もちろん聞いてたわ!」
「「クレルの決意を!!」」
どこからか二人の悪魔が現れ、くるくるとクレルの周りを踊り回る。

「…理御。あなたの力を、貸してほしい。」
ぱっと客席に一筋の光が差し込む。そこに、彼女のコインの裏側の存在、理御がいた。

「ク、クレル…!? ここは………?」
「場所などどうでもいいのです。あなたの力を、貸してほしい。」
「力…? どういう意味ですか…?」
混乱した理御にはいまいち理解できないようだった。

「運命に逆らうことを決めた今、あなたの力が必要なのです。」
「だ、だからどういう意味なんですか!!」
「ねぇ理御。君はクレルが最期、どんな目に遭ったのかを知ってるよね?」
いつの間にか理御の脇にはゼパルとフルフルが立ちはだかり、ニヤニヤと笑っている。
「最期って…それは、……………。」
「そうね。腸をブチまけられてたわよね、ゼパル?」
「そうそう。猫箱に隠した真実をベルンカステル卿がブチまけたんだよねー!」
「や、やめてください!! ………わかりました。クレルが望むのなら、私は力になります。」
「……ありがとう。」


「…クレル。あなたは、なぜ運命に抗うと決めたのですか? なにに抗おうというのですか?」
「…………。此度のゲームで、私の腹が切り裂かれ、真実を暴かれました。…それにはもう抗うこともなにもできません。終わったことですから。」
「では、あなたは何の運命に抗うというのです」
「出番です。」
理御の言葉を遮り、クレルは言った。
その言葉に、理御は2、3回目をパチクリさせる。

「………え? 今なんて?」
「出番です。」
「あの…え?」
「出番です。」
「だから、」
「出番です。」
「………………。」
「…………。」
これはつまり、こういうことだろうか。

「クレルはEP8で出番が欲しい、ということですか…?」
クレルは黙ってコクリと頷く。

「出番…ですか…。」
理御は悩んだ。なぜなら…クレルにはあまり出番があるように思えないからだ。

しかし、理御は彼女に協力すると約束してしまった。約束をした以上、彼女の願いを最大限に叶えるしかないのだ。
「………協力はしますが、どうすれば…。あ、そうだ! 聞いて回るのはどうでしょうか!」
「……理御に任せます。」
「では行きましょう、クレル。」
理御が手を差し伸べる。クレルはおずおずとしながらゆっくり手を重ねた。


*******


どこともつかない暗い廊下を二人で歩く。不気味に二人の足音がコツンコツンと響いた。
「だ、誰もいませんね…。というかここはどこでしょうか…?」
「…………。」
理御は少し恐かった。ここで襲ってきたら自分はウィルとは違って戦う術はない。
となると抵抗しようもない…。

「こ、怖いですね…。って、クレル! どこに行くのですか!」
「………こっち。」
「え?」
今度はクレルが理御の手を引き、先導する。
次第に通路の先に明かりが見え、その方向へ足を進める。


「…!? ここ…は……?」
そこは、お菓子の部屋だった。床のところどころにお菓子が散らばり、壁の棚らしきところにもお菓子が並べられている。

「ちょっとぉ、誰ぇ? 人の部屋に入ってきたのはー。」
その奥に、マシュマロのクッションにどっかりと座り、ポップコーンを食べるピンクのドレスの魔女がいた。

「あ、あなたは、ラムダデルタさん…!」
「あら、理御? なによぅ。あんたとウィラードの命の恩人であるこのラムダデルタ様に恩返しでもしにきちゃったのかしらぁ?」
「あ、いえ。その……。」
「………ん? あんたは…。」
ラムダは理御の隣にいるクレルをまじまじと見る。
「…ふぅん………。珍しいお客様ねぇ…。で、私になにか用でもあるわけ?」
「そ、その………。クレルはEP8での出番を欲しがっているんです。どうすれば出れるのかなと…。」
「出番? あっはははは! そんなこと気にしてるのねぇ! 気に入ったわ。このうみねこの主役ラムダ様が徹底的に出番を取得する方法を伝授してあげるわぁ!」
「主役は戦人くんですよ。」
「……EP7ではばなんとかさんと呼ばれてましたが…。」



☆☆ラムダデルタちゃんの 出番強奪教室☆☆

**その1**

「というわけで早速教えちゃうわよぉ! まずはそうね…キャラ作りね。」
「キャラ作り…ですか…?」
「人気を手に入れて出番を増やすにはキャラ作りから! これは基本中の基本でしょうが。あんたのキャラって薄いから目立たないじゃない。立ち絵の顔だってベアトと一緒だし………。」
「……同一人物ですから…。」
「あーもう。そんなのどうでもいいの! キャラ作りより先に基礎の基礎からね。笑顔よッ! 笑ってみなさい! そもそも無表情キャラなんてベルンと被ってるのよ!!」
「………笑顔…。」
クレルの頬がゆっくり持ち上がる。
そうして、とても不自然でぎこちない笑顔ができた。これにはラムダも苦笑いになった。

「あ……あー…笑顔はやっぱいいわ…。」
「…………はい。」



**その2**

「しゃべり方よ!」
「……しゃべり方…?」
「そ! うみねこはサウンドノベルだから台詞が命よぅ。個性溢れるしゃべり方をすればたちまち人気になれるわよぅ!」
「…どうすれば……?」
「んー…無表情でベアトリーチェみたいに汚い言葉遣いっていうのも案外ウケるかも…。とりあえずこの台本の台詞読んでみて。迫真の演技でねッ!」
「……………。ならば叫べ、リザインと!! 投了者はそう叫びキングを倒すのが慣わしよ。さぁ、降参か?! ならば屈服を宣言せよ、そしてキングを倒すように跪け!! そして妾の靴にキスをするがいいッ! お前のような男に靴を舐めさせるのに勝る悦びはないわぁッ、くっくくくくくくっかかかかかかかかかかかッ!!(棒読み)」
その迫真(笑)の演技に、ラムダと理御の時間が止まる。
クレルの表情はこれでどうだといわんばかりのドヤ顔(無表情だけど)をしているように見えた。


**その3**

「い、衣装よね…衣装。うん…。七姉妹とかシエスタみたいに少しはインパクトのある衣装じゃないと駄目ね…。そ、そうよねぇ…、をーっほっほっほっほっほ…。」
「ラ、ラムダデルタさん…大丈夫ですか…。」
「あんたにゃ私が大丈夫に見えるわけ…? ………ふふ、まあいいわぁ。あんたにこの衣装を貸してあげるわぁ!」
ぽんっと軽やかな音がすると、あたりが白い煙に覆われる。
「な……なにが…。」
「ふふん、結構かわいいじゃなぁい!」
煙が晴れると、そこには新たな衣装に身を包んだクレルが………。

「な、なんですかその格好はああああぁぁぁぁあ!?!?!?」
「くすくす! 少し露出度を上げてみたわよぅ。あーあと背中に羽をはやしてみたのよぅ。クレルちゃんマジ天使なんでしょう?」
「………………。」
露出度は明らかに上がっていた。元々豊満な胸が特に目立つようになっている。ピッチピチだ。さらに襟元が大きく開き、谷間が見えている。
なによりも下半身が七姉妹やシエスタのように太もも丸出しになっている。
背中も大きく開き、純白の片翼が生えている。
そして全体的にリボンとフリルで飾られ、もはや元のドレスの原型をまったく留めていなかった。

「うん! 可愛いでしょ? ね? 理御? これは絶対にかわいい!!」
「えっ……?」
「………これで、出番があるのでしょうか、ラムダデルタ卿…。」
「ええ! きっと増えるわよぅ! さ、行きなさい理御、クレル!」
「うわぁ!?」
どんっと背中を押される。
「…あれ?」
いつの間にかあの暗い通路に戻っていた。あのお菓子の部屋はどこかへ消えてしまい、まるで最初からなかったかのようだった。
「………ほ、ほんとに、これで出番が増えるのでしょうか…。」
「…………それは、運命に任せるしかありません。まもなく…EP8が始まりますから…………。」

彼女たちはやれることをやったのだ。

あとは、全て運命に任せるだけなのだ…。



そう。



うみねこのなく頃に…。





















EP8後


「く、クレル…? クレルー…?」
「……………。」
「あの、返事して…ください…?」
「…………………。」
「で、出番、あったじゃないですか! キャストロールに…。」
「………………………………。」
「あ! 礼できっと出番ありますよ!!」
「……………………………………………………………………ほんと…でしょうか…?」
「はい!! きっとあります! だから今度こそ出番を手に入れるためにがんばろうじゃないですか!!」
「理御………。」
「私たちの戦いはまだまだこれからです!!」
「………はい…!」
理御とクレルは力強く手を握りあう。


二人の戦いはまだ続くのだ。

うみねこがなく限りずっと続く………。

そう。



――――――うみねこのなく頃に。





続く…?




あとがき


ごめんなさいギャグでごめんなさいほんとすみません^q^
シリアスばっかりだからギャグかきたかったんだよおぉお!!なんか文句あっか!?え、あはいすみません(↑o↑)



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